羆撃ち2012年03月22日

kumauchi.jpg

何年か前に話題になっていた『羆撃ち』の文庫本が出ていたので思わず買って読んでみた。

実に面白いノンフィクションだった。
著者は小樽出身の久保俊治さんという方で、舞台のほとんどは北海道の山の中(あとの一部はアメリカ)。だから、北海道の山を歩いている人にはおなじみの、こんな内容がたくさん出てくる。

途中の尾根でイタヤカエデの小枝を折っておく。翌朝ここを通るときには、しみだした樹液が甘いツララになっているだろう。

闇の中で、すぐ傍らのエゾマツの根元から二メートルほどの高さのところに、何かがフワーッと飛んできては止まり、カサカサと幹を登っていく。暗闇の中に耳をそばだて目をこらす。それは何回となく、ある間隔をおいて繰り返される。懐中電灯を点けてみると、エゾモモンガの大きな目が、灯りの中に光って見える。

そして、ついにはこんな昆虫までもが登場する。

ふと雪の上に目を落とすと、クモガタガガンボにも似たクモのようなアメンボのような虫が何匹も一生懸命に歩いている。小さいのに凍りつきもせず、黙々と足を動かしている。

すごい! この著者はクモガタガガンボを知っている。しかもその虫がクモガタガガンボではないことまでわかるとは! もしかすると著者はエゾユキシリアゲを見たのかもしれない(ちなみにユキシリアゲは英語でSnow Scorpionfly)。

前半は、この人はほんとにハンターなのかと疑いたくなるほどの描写力で、山の中で一人前の猟師になっていく姿が描き出されている。後半になるとソフトバンクのお父さんと同じ種類の犬のメスが登場し、読み応え十分の様々な展開を見せる。ノンフィクションではあるが、きちんと“読ませる”構成になっており、あれだけの評判となったことが理解できる一冊だった。

もし、ヒグマの生態を詳しく知りたいのであれば、この本よりは『クマにあったらどうするか―アイヌ民族最後の狩人姉崎等』の方をオススメする。しかし、読み物として面白いのは断然こちらの本だ。いずれにしても、この二冊は『羆嵐』よりは読んでずっと面白かった。やはり体験した本人の言葉は、いくら取材をしたとはいえ想像で書いたものとは迫力が違う。

ところで、この本を読んでいて思い出したことがあった。著者は子供のころ、父親の先輩であるハンターの家によく連れられて行ったらしいのだが、実は私の祖父も小樽のハンターだった(専業ではないが)。年齢からいって、もしかすると著者は私の祖父の家にも遊びに来ていたのかもしれない。読み終わってふと、小さい頃に祖父の家で見た動物の毛皮や頭蓋骨なんかの記憶がよみがえってきた。
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羆撃ち。

コメントを読んで、私も買って読んでみたくなりました。(^^)
熊(クマ)撃ち...ではなく羆(ヒグマ)撃ち、なのですね。
作者は「大草原のみゆきちゃん」のお父さん。昔ドキュメントで
見たことがありました。学校までの数キロを一人で徒歩通学。
私ならクマが怖くて転校を懇願したでしょうね。(^^;)
舞台が北海道の原野。何が出てきても不思議でない環境。
たくましく大きくなったみゆきちゃんのその後を是非とも
知りたいものだと思っていました。イタヤカエデの枝から
滴る樹液のツララ...同じですね。(^^)

Re: 羆撃ち。

>北の旅烏さん
いや〜、ほんとこの本は面白かったですよ。
僕は20代の頃はほとんどテレビを見ていなかったので
残念ながら「大草原のみゆきちゃん」は見たことがありま
せん。
でも『羆撃ち』のあとがきによると、みゆきちゃんは大学を
卒業し、牧場の仕事を手伝いながら、乗馬用の馬の調教
をしているそうです。
ちなみにこの本は著者が結婚する前までの内容となって
いますので、本文の方には奥さんや子供たちは登場しま
せん。

クマハンター(ディアハンターのシャレだよ)

貴君のお爺さまはハンターだったのか!
知っていたら、家に遊びに行くんだった!行ったことないよね?

東京の人たちによくつくウソがあります。
「北海道では町内会に必ず一丁は猟銃がある。もちろん狩猟免許、銃の所持を免許を持った人がいるということだ。言うまでもなくクマ対策である。うちの町内会では前任の猟銃担当が高齢でやめたいというので、今度自分が引き継ぐことになった」
そういうと、たいていの人は信じます。
野良猫並にクマが闊歩していると思われているらしい。
もっとも昨年のクマの出没回数を思えば、無理もないが。

Re: クマハンター(ディアハンターのシャレだよ)

あ、いや僕の実家はぜんぜんハンターとは関係なくて、
祖父の家だけです。

まあでも、僕の行動範囲では昨年いたるところでヒグマ
が出たので、野良猫並みにいると言えば本当にそのくら
いいるような気がします(逆に野良猫は札幌ではほとん
ど見たことがないような?)。

そろそろヒグマも活動を開始する時期なので、少しは注意
しておく必要がありますね。

参考:平成24年春季ヒグマ注意特別期間
http://sukeroku.blog55.fc2.com/blog-entry-2709.html
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Scorpionfly

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※名古屋に転居しました!
円山を中心に、三角山や藻岩山、手稲山、野幌森林公園なんかにも出没します。書く内容によって文体が変わるクセがあります。

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