マリアージュ・マリアージュ2016年02月24日

金原ひとみ『マリアージュ・マリアージュ』

レイモンド・カーヴァーの『頼むから静かにしてくれ Ⅱ』の解題において、村上春樹はこんなことを書いている。

そして何よりも彼はオリジナルであった。驚くべきことに、レイモンド・カーヴァーはそもそもの最初からまったくのオリジナルのレイモンド・カーヴァーであったのだ。

初めて金原ひとみの小説を読んだとき、僕はこれと同じことを感じてものすごく驚いた。その小説が『オートフィクション』みたいなぶっ飛んだ作品だったから、なおさらだったかもしれない。それからこの人の作品はすべて読んだ(文庫のみ)。

これまではどの作品を読んでも「やっぱり金原ひとみだなあ」と感じてきたにもかかわらず、この『マリアージュ・マリアージュ』だけは印象が違った。いつものあの強烈さが影をひそめ、特に前半の作品(この本は短篇集です)は地味な印象さえ持ってしまう。登場人物はまぎれもなく金原ひとみの小説のキャラなんだけど、文章が普通の作家っぽいというか、いつもの「らしさ」が薄くなった印象を受けた。彼女もお母さんになって、だいぶ落ち着いてきたのかもしれない。

とはいえ、あのキョーレツな個性というかストレートにどゔぁーーーっと表現するあの言葉や文体が得意でなかった人には、ちょうど良い加減の小説に仕上がっているとも言えるような気がする。ただ、ぜんぶ結婚にまつわる話なんだけど、どれも幸せなストーリーではないです。人によってはものすごく現実的な話だろうし、人によってはぜんぜん別の世界の話だと感じるかもしれません。

まあ正直に言うと、出産して子育て中に書いたものなので、「もしかしてお疲れでパワー不足だったのかな」ともちらっと考えてしまったのだけれど、今までとはちょっと違う金原ひとみの短篇が読める本です。色々な書評なんかを見ていると「仮装」という作品が人気みたいだけど、僕は最後の「献身」という作品が好きだなあ。

その「献身」の一文を紹介しておきます。

深い絶望が大きな口を開けて、このホテルのラウンジの窓の向こうの方から、この世を飲み込むような勢いで、私に向かって飛んでくる。

やっぱりいいなあ、金原ひとみは……
ほ〜ら、あなたにも絶望が飛んできますよ!






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