小説家による生き物の?な話2016年07月15日



 昨晩から宮本輝の青春小説『春の夢』を読みはじめた。まだ最初の章しか読んではいないが、この本もなかなか面白そうな気がする。しかし第一章の最後の部分でアレ?と思ってしまった。この部分である。

その瞬間、彼は、びっくりしてあとずさりした。一匹の小さな蜥蜴とかげが柱にへばりついていたのである。しばらく立ちつくしていたが、哲之は恐る恐る柱に近づき、目を凝らして蜥蜴を見た。そして、わっと悲鳴に近い叫び声をあげて、うしろの壁ぎわまで下がった。蜥蜴は、きのうの夕刻、哲之が暗がりの中で手さぐりで打った長い釘で胴体の真ん中を貫かれていたのだった。



 それはトカゲではなくヤモリではないのか?


 トカゲは家の柱にへばりついていたりするのか? トカゲは人間が暗がりの中で打った釘に刺さったりするのか? そんなことを考えていたら、ほかにも同様に疑問に思った小説があったことを思い出した。






 まずは角田光代の『八日目の蝉』。この本は名古屋に引っ越したときにBOOKOFFに売ってしまって今は手もとにはないのだけれど、たしか登場人物の女がこんなことを言う場面があったと思う。

 蝉は7日で死ぬが、中には8日間生きるものもいるかもしれない。一匹だけ生き残ったセミは孤独でかわいそうだ。



 あの、すべてのセミは同じ日に一斉に生まれて、きっかり7日間生きて、また一斉に同じ日に死ぬんでしょうか?



 セミは種類や生まれる時期にもよるが、成虫になってからも3週間~1ヶ月程度は生きると言われている。しかも、成虫になるタイミングには個体差がある。ここに関しては読んで納得がいかなかったというか、この時点でしらけてしまって、そこから先が面白くなくなってしまった。けっこう残念な思いをした本だった。タイトルにもなっている一番重要な場面でしらけてしまったのだから……。






 最後は、なんと村上春樹である! 『辺境・近境』という旅行記のような本の中の「無人島・からす島の秘密」という章の中にその記述はある。

そしてゾウリムシみたいなやつ。こいつらは日の出ている時には砂の中で丸くなって眠っている。ところが日が暮れると、もそもそと上に這いだしてくる。そして食べ物をさがすのである。こいつらがうじゃうじゃとやってくる。



 あの、それはワラジムシかダンゴムシではないでしょうか? ゾウリムシは顕微鏡とかでないと見えないと思うのですが……。



 今日はなんだか波田陽区になった気分でござる! 斬りっ!!




追記:
春の夢』の第二章を読みはじめて驚いた。なんと宮本輝氏は、私がこんなブログ記事を書くことを見透かしたかのように、第二章の最初の文章をこうはじめていたのである。
 蛍光灯の、目に沁みるような光が、かえって蜥蜴とかげの体を黒ずんで見せていた。やもりでもいもりでもなく、間違いなく蜥蜴であることは哲之にも判った。その小さな爬虫類の縞模様は、哲之が子供の頃、石垣の隙間とか草むらとか畦道で見たものと同じだった。
でもトカゲは、いくら暗くたって人間に釘で打たれたりするかなあ。やっぱりちょっと設定に無理があるんじゃないかなあ?


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世間の人は…

小説家、というよりも世間一般の人の認識を知らされる思いですね。
ゾウリムシは、このエピソードに近いマンガを読んで、外でワラジムシを見つけて「?」となった記憶があります。

東海林さだおさんのマンガで、ゴキブリが8本脚に描かれていて、ちょっとがっかりしたこともありました。

それにしても第二章の展開は、見事に先読みされたというか、はめられたというべきなのか…?
(^_^;

Re: 世間の人は…

なるほど、ゾウリムシとワラジムシってよく間違われるんですね!

宮本輝さんの第二章の展開については、僕は違った見方をしています。
実はこの『春の夢』という小説は、文學会という雑誌に連載されていた
ものなので、第一章が掲載されたあとに「これはヤモリじゃないか?」
という指摘があって、それに応じて第二章の始まりを締切ギリギリで
ああいう内容に変更したのではないかと……

No title

「暗がりの中で手さぐりで打った長い釘」の一文は大事な部分が
抜け落ちているんですな、「プロ用の自動クギ打機」を使ったと書い
てくれれば誰もが納得するはずなのに・・・なんてね。

札幌も暑くなってきました・・・家の周りが新築ラッシュなんで自動
クギ打機の音が凄いんですよ、窓開けられないんですよ。

小さなオオクワガタに餌をたくさんあげれば大きく育つとか、コクワガタ
が大きくなるとオオクワガタになるとか、世間一般の人は案外いいかげん
な知識しかなかったりしますよね。

後から思ったのですが

Scorpionfly さんみたいな編集者との間に、
「先生、これはトカゲじゃなくてヤモリじゃないとおかしいですけど?」
「どっちでも同じだよ」
「同じじゃないですよ!」
「もう、面倒臭いさなあ、じゃあサラサラサラ、これで文句ないだろ!」
「ええー?」
なんてコトがあったんじゃあ…

Re:

>ヒデさん
クギ打機って洋画でしか見たことないんですが、今では
日本でも普通に使ってるんですね!
うちの近所ではマンションを2棟解体作業中で超うるさい
んですが、さすがにこちらの暑さには勝てず、窓は全開に
してます(笑)。

>おなら出ちゃっ太さん
ほんとにそんな感じだったのかもしれませんね。
「もう、面倒臭いさなあ、じゃあサラサラサラ、これで文句ないだろ!」
っていうのは、なかなかリアリティがあります。
来年、富山に行ったらぜひ聞いてみてください(笑)
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Scorpionfly

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※名古屋に転居しました!
円山を中心に、三角山や藻岩山、手稲山、野幌森林公園なんかにも出没します。書く内容によって文体が変わるクセがあります。

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