『騎士団長殺し』の感想2017年05月28日

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 村上春樹の最新作『騎士団長殺し』を読了したのでその感想(ネタバレなし)など。

 ずばりどのくらい面白かったかというと、さまざまな側面でプラスマイナスはあるものの、おそらく『海辺のカフカ』よりもあとの長編小説の中では最高傑作ではないかと(つまり『1Q84』や『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』よりも面白かったということです)。

 先週、出張で東京に行ったときに新幹線の中でも読んでいたのだが、思わずニヤリとしてしまったり、腕に思いっきり鳥肌が立ってしまいあせったりした(その日は半袖で腕がまる見えだったので)。ニヤリとしてしまったのは、『グレート・ギャツビー』を読んだことがあったからだ(たぶん三回くらい)。もしこれから『騎士団長殺し』を読もうと考えている人がいるとしたら、その前に『グレート・ギャツビー』を読むか、これまでに何度も映画化されているのでそれらのうちのどれかを観ておくことをお勧めする。個人的には1974年に公開された『華麗なるギャツビー(ギャツビーを演じているのはロバート・レッドフォード)』が本で読むよりも面白かった。

 ちなみに鳥肌がたったのは、この物語の中には怪談のような要素も含まれているからだ。そしてその怪奇現象に関する謎解きのようなストーリー展開もある。こういうのは村上春樹の小説の中では珍しいかもしれない。これまで、「それでそれで次はどうなるの?」とワクワクしながら村上春樹の小説を読んだことはほとんどなかった。読んでいて、これはエンタメかミステリーみたいだなあと思った。

 しかし、全編にわたってそのようなストーリー展開がなされているわけではなく、多くはいつもの村上春樹だ。ほんとうに、実にいつもの村上春樹で、登場する女の子は『1Q84』のふかえりのようでもあり、『ダンス・ダンス・ダンス』のユキのようでもあったりするし、主人公はいつもの村上春樹の小説でするようなあんなことやこんなことを何度も何度もする(あるいはしてもらう)。そしてクラシックの音楽を聴き、とても上手に料理を作る。ただし「やれやれ」というセリフはこの本では一度も登場しなかったと思う。

 全体をとおして気になったことを一つ挙げるとすれば、それは村上春樹の書く文章の変化だ。『1Q84』あたりから流麗さや繊細さが失われてきたような印象があるが、それがさらに進んでしまったような気がする。もしかすると、原稿用紙2,000枚分もの推敲をやるのが、年齢的にしんどくなってしまったのかもしれない。

 とにかくいちばん気になったのは、「~した。まるで~みたいに。」といったパターンの文章が多いことだ。べつに比喩の多用は悪いとは思わないのだけれど、「~みたいに。」で終わる文章が次から次へと登場して、読んでいてまたかと思ってしまう。それから「~が、~。」というような「が(いわゆる順接の『が』)」の使用頻度も上がっている気がする。もちろん、こんなことを感じてしまうのは、これまでの村上春樹の文章が圧倒的に凄かったからであって、今の村上春樹の文章がその他の作家よりも劣っているとはまったく思わない。でも村上春樹の小説として読んでいると、どうしてもそういった細かい部分が気になってしまう。



 実を言うとこの本を買うよりも先に、川上未映子が村上春樹にインタビューをした本『みみずくは黄昏に飛びたつ』を買って読もうと考えていた。しかしレビューを確認してみると『騎士団長殺し』に関する内容が多く書かれていることがわかったので、まずは先に『騎士団長殺し』を読むことにした。そしてわかったのは、みみずくは『騎士団長殺し』に登場するキャラクター(というか鳥)であり、「ただのインタビューではあらない」という宣伝文句の「あらない」は騎士団長のしゃべり方だったということだ。やっぱり先に『騎士団長殺し』を読んでよかった。

 とにかく、これでやっと『みみずくは黄昏に飛びたつ』が読めるぞ!







追記:
そういえば『騎士団長殺し』の中で、細かいことだが普段から自然観察をしている者として気になった箇所があった。次の部分だ。
その六年後に妻はスズメバチに刺されて亡くなった。春の初め、敷地の中にあった広い梅林を一人で散歩しているときに、何匹かの攻撃的な大型の蜂に刺されたのだ。
- 第2部 p135〜136より引用 -
春の初めならまだ働きバチは生まれてなく、女王蜂が単独で行動している時期のはず。しかも女王蜂は一般に攻撃的ではない。そういえば前にこんな記事を書いたことを思い出した。


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